空調設備(熱源機器・空調機器・搬送機器等)の運用実態の分析と、高効率かつ低炭素となる改善提案を行っています。主にBEMS(中央監視装置)により記録された一時間ごとのデータをPythonで分析していますが、物件によっては100点を超えるポイントの1分毎のデータを数年分解析することもあります。
解析対象は当初、本学の各キャンパスの主要なエネルギー系統や建物(天白キャンパス、八事キャンパス、名古屋ドーム前)でしたが、やり尽くしてしまったので、近年は、庁舎、病院、他大学の建物を対象としています。

BEMSデータを用いた運転分析と改善提案

2023年度までに、名城大学内の系統・建物を7か所解析しました。また、2025年現在解析中も含め、学外では、病院施設6件と庁舎2件の分析を手掛けています。
BEMSの日報データを使う場合、一日に一つのcsvファイルが出力されるので、これが最低でも分析日数分存在することになります。また、個々のファイルはexcelで印刷されることを前提としたフォーマットであるため、csvファイルとはいえ行も列もとびとびに数値が入っていたりと、一筋縄ではいきません。
吉永研ではゼミ配属をされてすぐにPythonの時系列分析の基礎を学びますが、本物のデータはとてもDirtyなので、卒論生は最初に高いハードルに取り組むことになります。

地中熱利用空調システムの長期運用実績分析

ナゴヤドーム前キャンパスには、地中熱利用システムが導入されています。これは圧縮式冷凍サイクルヒートポンプチラーのヒートソース(暖房時)・ヒートシンク(冷房時)に地中熱を利用するというものです。一般的になヒートポンプチラーでは、土壌ではなく大気を対象に熱を汲み上げたり捨てたりしますが、土壌は夏は大気より低温に、冬は高温になるため、熱源機器の効率(COP)がより高くなることが期待されています。しかし分析の結果、年間の冷房熱量のほうが暖房熱量よりも大きいので、地中温度が外気温度よりも高くなってしまい、夏場に期待される高効率な運転ができないことがわかりました。やはり、運転データの丁寧な分析が重要です。

搬送系システムの高効率化

二次側ポンプのWTFや往還温度差を適切に管理することで、搬送系の効率向上に努めています。WTFとはポンプが搬送した熱量をポンプの消費電力量で除したパラメータで、この値が大きいほど省エネということになります。近年、ポンプにインバータを併設し、周波数制御を適用することは一般的になってきましたが、吐出圧一定制御の場合は目標とする吐出圧を適切に設定することや、インバータの制御下限値を十分に低く設定することなどに留意していないと、実際には省エネ運転になっていないということがあります。搬送系のチューニングは追加コストの負担がほとんどゼロで実施できるため、どんな施設・システムでもチェックすべきポイントといえます。