名城大学の各キャンパスを対象に、空調設備(熱源機器・空調機器・搬送機器等)の運用実態の分析と、高効率かつ低炭素となる改善を行っています。分析には主にBEMS(中央監視装置)により記録された一時間ごとのデータを使いますが、ナゴヤドーム前キャンパスに導入された地中熱利用システムのように特別に設置されたデータ収集システムで収録された数分毎の詳細なデータを使ったり、ポンプの消費電力量を測定するためのクランプ型電力量計を臨時に設置することもあります。研究で明らかになった問題点や改善ポイントは、本学の施設部担当者らと連携し実際のシステムへとフィードバックしています。

従来VBAで解析を行ってきましたが、2021年度から全面的にPythonに切り替えました。

地中熱利用空調システムの長期運用実績分析

ナゴヤドーム前キャンパスには、地中熱利用システムが導入されています。これは圧縮式冷凍サイクルヒートポンプチラーのヒートソース(暖房時)・ヒートシンク(冷房時)に地中熱を利用するというものです。一般的になヒートポンプチラーでは、土壌ではなく大気を対象に熱を汲み上げたり捨てたりしますが、土壌は夏は大気より低温に、冬は高温になるため、熱源機器の効率(COP)がより高くなることが期待されています。本システムでは、土壌との熱交換には井水とボアホールを利用しており、冷房時には夜間電力を利用した氷蓄熱システムと併用が可能となっています。

搬送系システムの高効率化

天白キャンパス・ナゴヤドーム前キャンパスの複数の空調系統において、二次側ポンプのWTFや往還温度差を適切に管理することで、搬送系の効率向上に努めています。WTFとはポンプが搬送した熱量をポンプの消費電力量で除したパラメータで、この値が大きいほど省エネということになります。近年、ポンプにインバータを併設し、周波数制御を適用することは一般的になってきましたが、吐出圧一定制御の場合は目標とする吐出圧を適切に設定することや、インバータの制御下限値を十分に低く設定することなどに留意していないと、実際には省エネ運転になっていないということがあります。搬送系のチューニングは追加コストの負担がほとんどゼロで実施できるため、どんな施設・システムでもチェックすべきポイントといえます。